王と道化とその周辺

ちっぽけ嘘世界へウインクしておくれよBaby

俺たちのパラダイスはここにある~Summer Paradise2020以下略 Travis Japanメンバーソロ公演~

 2020年8月1日から10日にかけて、「Summer Paradise2020 俺担ヨシヨシ自担推し推し 緊急特別魂」(以下「サマパラ2020」と表記)のTravis Japanソロ公演が行われた。会場は「サマパラ」おなじみのTDCで、一日3公演・全公演生配信という形式、かつJr.としては初(?)であろうソロ公演という点でおおいに耳目を集めた。
 ソロ公演という試み自体に対する個人的な感慨はといえば、「今のうちに色んなことを経験させたいのだろう」であった。未デビューのJr.でありながら座長公演。Jr.でありながらバックダンサーを従えてのソロ公演。「ハイスペック・スキル集団」というイメージの強いトラジャへ、よりイメージに近い力を持たせるための「実績」を積ませている。そんな印象だ。グループの公演は時世の影響で流れてしまったものの春の単独公演「ENTER1234567(エンターセブン)」があったため、変化をつけるという意味もあるだろう。(結果としてグループ単独公演の実公演は中止・配信に切り替えられたため、ソロ配信公演で培った配信コンサート用の演出力が「エンターセブン」に活かされることとなった。順序が逆転したおかげで「より面白いものが見られるのでは」という期待が高まっているように思えるから、奇妙な運命である)
 群舞での「揃ったダンス」を武器としつつ、それぞれ際立った個性も持ち合わせるトラジャのメンバーがソロで各々どのような個性を魅せてくれるのか、私は純粋に楽しみだった。まぁ、何より良かったのはチケットと移動の心配をしなくて済んだことです。料金もFC会員価格で1500円。メンバー全員の公演を見ても10,500円で、地方住みの私が新幹線で東京に行く交通費よりも安いのだ。(「配信ではモチベが……」という現場至上主義者の意見も見かけたが、それは都会で暮らす富豪にしか言えないことじゃあないか、と思う。)
 
 以下、脳直感想メモをコピペするつもりでいたけどちょっとひどかった(当社比5割増しくらい)ので冷静な頭で整理整頓清書したトラジャソロ公演の感想文です。一名だけ激烈に長いのは仕方ないことです。
 
【もくじ】

 

 8月1日 川島如恵留 の のえぱら「きっとあなたは魔法を使う」

 土曜で休みだったので親類には「この日は一歩も外に出ません」と大宣言しておき、前日に配達寿司を予約し、万端の準備で迎えた公演。
 如恵留さまは7月から不定期更新制になったグループのブログを毎日欠かさず(マジで)更新しておいでで、ソロ公演までのリハ期間にも様々な「焦らし」や、バックについてくれた少年忍者のメンバー8人(以後如恵留さまのブログにならい「8忍」と表記)との微笑ましいふれあいなどをセルフリポートしていた。そのなかにはトップバッターとしてのプレッシャーから来る緊張や不安なども垣間見られ、ふだんあまり余裕なさそうな様子を見せない彼だっただけに、ツイッターランドでは心配するファンの声もぼちぼち見受けられた。
 前日に更新されたブログとInstagramでは「誰よりも楽しむ気持ち」と意気込みを表明し、持ち直したように見えたので、こちらも余計なことは考えず、ただ楽しむ気持ちで初日を迎えることができた。
 そうして始まった12時公演。蓋を開けてみれば、一瞬の淀み弛みもなく完璧に「出来上がった」公演だった。

 公演のセットリスト構成をこちらの感覚でいくつかのセクションに分け、とくに印象に残った部分を書いていこうと思う。

・Danger Zone~so young blues
 アイドルのコンサートといえば物々しいOP(映像付き)で溜めて溜めて溜めてドーン! というイメージだったため、開幕どしょっぱつからステージにおわしたことに心の準備が間に合わずめちゃくちゃ慌ててしまった。その後もずっと画面に推ししか映っていないこと、歌が上手いこと、とかく如恵留さまが美しいことにずっと驚いていた。すげぇ! ソロ公演ってこういうことなんだ!! ずっと野鳥の会じゃん!! 
 この二曲は存じ上げないながらも「『SHOCK』のライバルがやってそう」と漠然と思っていたところ、ライバルどころか堂本の光一さんのソロ曲だそうで。まさしくミュージカル! ショー! といった選曲だと思う。あと『Danger~』原曲の振り付けはトラジャの父ことトラヴィス・ペイン氏によるものらしく(如恵留さまのパフォーマンスでは違うものを使用)そこも意識されているのだろうなと。
 『so young~』は脳直メモを見ても不適切発言しか残っていないので(ノー編集掲載を断念した最大の理由)言葉少なになるが、ひとつ言うと階段上で寝そべるくだりでのマイムは回を重ねるごとに、つまり夜に近づくほど……でした。あと配信回線の調子が公演序盤ほど宜しくなかったのですが、寝そべったところだけは毎回とてもクリアに映してくれたのでJNOの回線はえっちです。あ、言っちゃった。
 
・見果てぬ夢を~DREAMER~サポーターズ!
 激しいナンバーから一転してしっとり聴かせる選曲『見果てぬ夢を』。少年隊版「PLAY ZONE」の劇中歌だそうで、プレゾン出身! トラジャメンバーである如恵留さまの、ジャニーズ舞台作品への意識がここにも見える。いや~~~それにしても歌が上手いな。ミュージカルスターの歌い方だ。
 で、歌い上げたのちスッ……と取り出したのは何かと思えば「指揮棒」——タクトですよ。いやそれ絶対好きじゃん如恵留さま推してる人みんな好き奴じゃん!! と大興奮しました。鬼に金棒、川島如恵留に指揮棒である。あと如恵留さま好きな人はきっと9割9分指揮者の西本智美さんも好き(ド偏見)
 もちろん如恵留さまだから指揮棒は指揮するためだけにあるわけもなく。オケに合わせて優雅にかつ力強くあやつったのち、キラキラの紙吹雪を舞わせて、カメラがパンしたところにバックダンサーの8忍たちが登場している、という魔法のような演出を魅せてくれた。そう、あなたって魔法使いだったのね! と演劇ちっくな台詞が思わず口をつく始末である。高く両腕を広げて遠くを仰ぎ見る如恵留さま、これぞ如恵留さま、という図。
 バックダンサー8忍を従えての『DREMAER』『サポーターズ!』、こちらもジャニーズ制作舞台『Dream Boys』『応援屋』からの選曲。『DREAMER』の鐘を鳴り響かせる如恵留さまの拳の振りが大変エモーショナルだった。そしてこの曲の間奏中に初めて、視聴者に向けてのご挨拶が入る。パフォーマンス中、間奏の短い時間内きっかりに収まるよう、公演タイトルと自己紹介、意気込みからバックダンサーの紹介まで盛り込んでいる(「少年忍者のみんなと~」のくだりで、如恵留さまを挟んだ両サイドの8忍がスッと歩みを進めるあの画面の美しいこと!)。座長の口上とでも言うべきか、計算し尽くされた台本と一字一句まで正確な読みあげの技術を見せつけられてこれまた非常に興奮した。わたし、アナログ太郎さんの「昭和のラジオで前奏中の時間きっちりでアーティストの小ネタを挟みつつ曲フリするラジオパーソナリティ」のネタがめっちゃ好きなんですよね……技術……。
 また、この8忍という大所帯を選んだ(トラジャ公演のバックダンサーのうち、トラジャメンバーが積極的にオファーしたのは如恵留さま→8忍のみ)のも、群舞で魅せるミュージカルや舞台を生きてきた如恵留さまらしさも織り込みつつ、かつてのトラジャ(総勢9名)のセンターで踊っていた彼の姿はかようなものだったのだろうか……と想像させられる部分があった。
 『サポーターズ!』は以前の横アリ単独公演でも披露していた(歌い踊るというよりひたすらバク転していた?)楽曲で、この自粛期間に体得した手話で冒頭と締めのサビを表現している。手話を用いて歌詞を表現するパフォーマンスは「ISLAND TV」でも数曲披露しており、勿論ソロ公演でも見せてくれるだろうと期待していた。後半にもメドレーとして登場するが、そのセクション以外でも随所に手話が使用されていて、「誰一人取り残さない」というテーマに沿った試みだと思った。サビの歌詞が普段から如恵留さまがブログで語っている在り方のそのまんまで、これまで積み重ねてきたテキストと、歌声と手話、すべてで「響いた」パフォーマンスだった。

・小MC~Missing piece~ダンスバトル~TAMER~アンダルシアに憧れて
 ようやく小休止。改めて公演タイトルと挨拶、そしてステージを囲むように設えられたスクリーンに投影される「デジタルうちわ」(通称「デジわ」)へのファンサービスタイムである。この「デジわ」が表示されると配信画面が大いに乱れるため、視聴者としてはやや不満だったものの、無観客配信公演という観客からの声援・リアクションが感じられない中で、観客からのメッセージとして表示されることは演者にとってよいことなのかもしれないな、とも思う。(如恵留さまとしてはリアルタイムのコメントが右から左に流れていってほしいのかもしれない。888888888~)あと、如恵留さま、お水を飲む瞬間くらいしか黙らない。無音の瞬間を作らない。ホントにマジでずっと淀みなくお話ししておられる。すごい。
 トラジャメンバーの吉澤閑也が今回振り付けを担当してくれた、と紹介してからの『Missing~』。如恵留さまと「地元じゃ負け知らず」な仲と知られる中山の優馬の曲だそう。当時のことは知らないなりに『SHOCK2019』観劇済の者として胸アツであるし、かつての盟友と今の同胞をつなぐパフォーマンスとしてのエモさがあった。
 そこから流れるように少年忍者のアクロバット担当安嶋秀生くんとのダンスバトルパートへ。赤コーナー・青コーナーといった塩梅に背景とライティングが切り替わり、チャンピオン如恵留さまに挑戦者安嶋くんが戦いを挑むような構図をとるここがめちゃくちゃカッコいい。このアクロバットダンス対決も安嶋くんを擁する8忍でなければできなかったことなので、バックの最適解を見つけてきたのだなぁと思う。続く『TAMER』は単独公演「ぷれぜんと」でも演じられたジャニーズWEST中間淳太さまのソロ曲。椅子を用いた振り付けもほぼ単独公演のままだったか。メインステージからセンターステージへ8忍たちを先に差し向ける姿はまさに狩りを命じる「調教師」である。
 この次が、「サマパラ2020」記者会見で本公演の目玉曲として披露された『アンダルシアに憧れて』ことの経緯は知らないがジャニーズ必修課題であるらしく、カウコンや昨年の「Jr.祭り」でも演じられてきた曲。前曲からのつなぎの前奏部分でジャケットを脱いで開始位置につくんですけれど、ここはシルエットのみで見せた18時公演が最っ高にキマってて好きでした。衣装チェンジを歌詞冒頭の「ダークなスーツに着替えて~」の中で自然とやってるところも上手ぇ~と感心(伝統的にこういう振り付けなのかしらん?)「いかすクツをはいた」脚の殺傷力が鬼高そうで震える。衣装がトラジャの衣装の中でも3本指に入るほど好きな黒地に金刺繍のジャケットなところもいい。マッチさんのバックについたとき作られたものだそうなので『アンダルシア~』をやるにもベストマッチだったのでは(マッチだけに)手首をひらひらと捻ったりピタっと静止するフラメンコダンスが本当に似合っていて優美で官能的でカッコよくて美しくて、如恵留さまがこのパフォーマンスをソロコンのメインアクトとして会見でも取り上げ、「ずっとセンターで踊りたかった」と語るのがわかる。映えるもん。映え映えの映えですもん。
 
・小MC~虹~名脇役~大MC
 お着換え(堂々たる脱ぎっぷり)を披露しつつキーボードセットに着いてピアノ弾き語りで『虹』。自粛期間中に「ISLAND TV」で突然投稿された『虹』は嵐・二宮和也さんのソロ曲でたいそう人気らしいそれは以前、メンバーの宮近海斗と披露した「思い入れのある曲」だそうで。僕としてはもうそれだけで胸いっぱいのちゃっかりなので良いのです。
 『名脇役』の演出については別記事を立てているのでそちらを参照いただくとして、ストレートな演劇としてではなく歌唱パフォーマンスの中で魅せる感情表現がすさまじかった。芯からミュージカルの畑のお人なのだなぁ。
 メインステージからセンターステージに移動しながらお手紙(?)を拾っていくMC導入はちょっと不思議で面白かった。拾い集めたお手紙はバックの8忍たちから如恵留さまへの質問で、それを中心にMCを進行していく。質問者だけでなく全員まんべんなく話題に入れるよう気を配っているのがよくわかって、大所帯をきれいにまとめる手腕は流石だなと。陸人くん……人生って……なんだろうね(哲学)
 
・手話メドレー(世界がひとつになるまで・背中越しのチャンス・愛のかたまり・オレンジ・無限大・One Love・世界にひとつだけの花)
 4~5月の自粛期間中に『ISLAND TV』で全50回を更新した「ノエルと一緒に手話を学ぼう」の復習コーナーでした。
 これは別の日の話になるですけども、6月20日配信の『Johnny's Happy Live with You』Jr.合同公演で、最後に「世界が~」を出演者全員で歌ったときも(おそらく)全篇手話で歌詞を表現していた如恵留さまでしたが、そのあとの締めの挨拶において、MC用のマイクは持たされていなかった中で「またお会いしましょう、さようなら!」の手話をした瞬間、雷に打たれたような衝撃が走ったんですよ。わかる! わたしにもわかる! 如恵留さまの言ってることが!   「Water!」じゃないですけれど、この日ようやく理解できたのだと思う。手話ってもちろん大前提としては、声帯や聴覚を使用しない方のための言語としてありますけれど、わたしのように普段聞こえている人間も環境によっては聞き取りづらいことや、発話できない場面はあって、その際に手話が身についていれば、コミュニケーションをとることができる。それは手話以外にも、多言語対応の街中の案内表示だったりYouTubeの字幕だったりする。聴覚に問題はなくても音声情報を処理するより文字情報のほうが伝わりやすい人はいて、そういう方には字幕テロップはありがたいし、逆に文字を追うのが苦手な人でも朗読作品・ボイスドラマなら文学に親しめる。手段をひとつ以上持っていることで悪いことなんてひとつも無い。大前提は忘れず、そのうえで様々な方法を用いてコミュニケーションをとれるようになることで、より齟齬なく、広く、行き渡る社会になる。如恵留さまの目指すところはそこで、「伝える」アイドルの理念なのだろうと思いました。
 「ス」「キ」の2文字を床でやる人を初めて見たことに笑い、とにかく元気な8忍になごみましたし、『無限大』ラストに「7」を数えて「愛おしい」を表現したところ、他にもたくさん、丁寧に織り込まれた「愛のかたち」が伝わりました。あと、『愛のかたまり』のラスト、如恵留さまの前で8忍が2列に並んで左右に分かれるところ、12時公演では如恵留さまに完全に被ってしまっていたところを15時以降2回はしっかり間が空けられて真ん中の如恵留さまが見えるよう改善されていたので、ちゃんとチェックされているのだなぁと感心しました。ただメインでアクトしている如恵留さまが見えない、というだけではなく、手話だから見えていないと意味がないので。
 
・め~僕だけのプリンセス
 昨年のHey! Say! JUMPツアー「PARADE」にバックとして参加し(そしてそこに私が偶然居合わせて大騒ぎし)、ツアーの思い出を語る中で「この曲がソロでやりたいくらい好き」と語っていたことはしっかり記憶していましたよ。ええ。まさかホントにやるとは。
 のちにブログでこの曲について「やり切ってる」と表現されていて、曲を終えたとき「やり遂げた」者の顔をしていたことを思い出してその読みが間違ってなかったことを知りました。本家ツアーバックのときはお米粒でしか視認できなかった「可愛くてごめんね」がばっちり大写しで記録に残ったのでもう余は満足じゃ……。
 そして昨年のサマパラでソロコーナーとして披露した『僕プリ』は、『ISLAND TV』のライヴ配信(「JNO」ができたけど島での配信はもうしないのでしょうかね……)のハーフサイズ尺には入らず見られなかったもの。(本家Kis-My-Fit2宮田王子のバックで華麗に執事をしている様子はこちらで見られます。最高ですね)『め』を引きずってイントロできゃっきゃと騒いでいたのも可愛く、曲中はステージから通路に降りて、王子様と従者8忍(のうち4忍)の小芝居をしつつ唄う。この曲も手話で歌詞を表現しています。自粛期間中に手話を始めた、というように言っておられることが多いですが、実は去年夏の『僕プリ』初披露時からずっと取り組んでいらさるのですよね。某クイズ番組でもさりげなくスムーズに指文字を披露されていましたし。
 
・Unique Tigers~夢のHollywood~Together now
 グループオリジナルのメンバー紹介曲をソロコンで選曲するとは。そして自分で撮ってきて編集したメンバーのリハ中動画を画面に合成して流すとは。肝心の如恵留さま自身が紹介されるパートはバックの8忍がぐるっと囲んで歌ってくれるという……そんな発想あった?!
 YouTubeにアップされているオースティンマホーン日本公演ゲストアクト時の『Unique~』ではクールに決めている自分紹介パートをきゅるきゅる可愛こちゃんモードで演じてくれたのもおいしい。あと、ツイッターランドでちらっと見かけただけなので正確なところは不明ですが「この曲で初めて推しのソロパートを聴けた!」という8忍担の声に「それめちゃくちゃ“事件”じゃん……」と思ったり。如恵留さままさかそこまでお考えで……。各メンバーパート別のオケアレンジの違いが今までで一番わかりやすかった。配信用音源の取り方の問題かな。
 そうしてばっちりメンバーを紹介した後に、メンバー一人ひとりへのメッセージ、からの「始まりの曲」としてのグループオリジナル曲『夢ハリ』と、『Together now』。ときに声を震わせ目を潤ませて訥々と語られるメッセージにじーんと浸っているところに流れる『夢ハリ』のイントロがたまらない。そしてやっぱりうたがうめえ。とくに最終18時公演、一瞬言葉に詰まって歌詞どおりに唄わず「本当にありがとう」と呟いたとき、エモと同時に「生歌ァ?!」という動揺に襲われましたよね。いやわかってたけど、わかってたんだけど、如恵留さまFOREVERうたがうまい、ずっとうたがうまい。
 そんでこのセクション、エモーショナルさも然ることながら、シンプルにラストの演出に向けて畳みかける構成がめちゃくちゃ上手くないですか? しかもそれが既知のファンにも、初見の一般視聴者にも効くよう出来てる!
 初見の客に向けては第一に、グループのトップバッターとして「ここから続く6人の公演もぜひ」と映像付きで紹介する『Unique~』。彼らのことを何も知らなくても胸に沁みるようなメッセージがそれを補強し、続いて演じるグループのオリ曲『夢ハリ』ソロアクトでは、「さっきのメンバーがいたらどう見えるのだろうか?」と想像させ、ラストの演出で「いたらどうなる」の答えを提示するんですよ。そこには素晴らしいハーモニーがあると。
 トラジャを既知の、すでにファンである視聴者は、『Unique~』~一人『夢ハリ』までで、もう他メンバーが恋しくて恋しくて仕方なくなっていると思うんですよ。でしたもん。そこに『Together~』での、空のスポットライトからのメンバー大登場。「おるやん……」と6つのライトにじんわり感じ入っていたら「おるやん?!?!」になるわけですよ。 「ここにいてほしい」という望みが「叶う」というサプライズをもっとも効果的に出せるセットリストだったと思う。ものすごく考え抜かれている。
 初日だからこそサプライズが完璧にサプライズであれる(二日目以降はどうしたってネタがバレ始めてしまう)ことも踏まえているだろうし、かつ、「この終盤の演出は全員共通なのかな」と察したカシコのオタクも、どこからどこまでが共通課題曲なのかわからないようになっている(それぞれ違うオリ曲やってから『Together~』で締める構成なのかなとか予想していた)(蓋を開けたらこんなにオリ曲やったの如恵留さまだけだった。好きです)ものすごく考え抜かれている。
 
 手話表現によるバリアフリーの意識や、伝統(ミュージカル・ショースタイル)と革新(ほぼ最新の楽曲)、如恵留さまを、トラジャをよく知っている人にも、知らない人にも目を配った「誰一人取り残さない」が、マジのガチで実践されていた、と思う。
 また、この感想文を書くにあたってセトリを振り返ってみて、さきにまとめたセクション区分や、如恵留さまが自身のブログで解説したセクションとは別に、
・『Danger~』から『アンダルシア~』までがミュージカルを自身の表現の礎とする如恵留さまの「過去」
・昨年バックとしてついた先輩の最新に近い楽曲パフォーマンスである『め』『僕だけの~』で締められ、その演出の意義をブログで表明するところまでがセットのピアノコーナーや、今最も力を入れている手話(ついでにクイズ番組出演の告知)後輩ちゃんとの微笑ましいやりとりなど、今まさに輝いている如恵留さまの個性で魅せる「現在」
・「グループと共にある」という決意表明のような最終セクションが「未来」
 を示しているようにも感じられた。そんな多層的な読みもできる「素晴らしい」公演だったと思う。
 

 8月2日 中村海人 の うみぱら「近距離パワー型コンサート!」

 2日目の公演、つまり比較対象は初日の如恵留さまの公演である、という前提で見て、パーフェクトだったと思います。「如恵留さまの公演になかった要素」が狙い撃ちで実装されていたというか、ようは「誰一人取り残さない」=「遠距離全体魔法」の真逆である「近距離単体物理」というやり方。それが配信公演(おそらく大多数の視聴者が、ひとりでPCないしスマホ画面を見ているであろう)だから「すべての視聴者を“特別な一人”にする」ことができるという、配信の特性に中村海人のキャラクター性を合わせて活かしきった構成だった。
 まず、OPからして違う。演者がステージに居ない。ドーンとステージに出てくるところから、でもない。舞台裏に「私室」のようなセットを設けて、カレンダーや時計で唯一無二のその公演の一回性を際立たせ、メンバーの写真が可愛く飾られた通路をダンスしながら渡り、鏡台前で衣装を選んで着替えて(公演ごとにチョイスが違うのも「気分屋さん」っぽくて超イイ)、ステージへ出てくるところまででまず一曲使っているわけである。私的空間をハレの舞台にシームレス接続してしまうのがすごい。裏も表も一続きの「中村海人」であるという表現なのか。これは絶対に如恵留さまがやりそうもないことで、中村のカイトだから「やる」のだ、ということが1曲目から如実に理解り、その魅せ方の違いと、こんなにも違う人間が普段同じグループで活動し、ひとつの公演を作り上げているのだという事実の面白さに大興奮してしまったわけである。
 この後、いわゆる「デートなうに使っていいよ」的な、カメラ=視聴者の視点そのものと錯覚させるカメラワークを駆使した演出が用いられ、センステの椅子に視聴者はご案内されてしまう。まるでそこにいる視聴者ただひとりのために唄ってくれているような、射程距離1メートルの超近距離パワー型スタンド攻撃である。確かにこれ、通常の客入れた公演じゃあまず出来ない。わたしは近距離パワー型演出への関心が薄いので、視聴者視点カメラ担当のスタッフさんが実際にあの椅子に座ってたのかどうかが毎回気がかりでした。あと、「ひとりじめ」を地味に毎回甘噛みしていたところが可愛かった。
 もちろん視聴者参加型でも、一対一の近距離パワー型演出だけではなく、前々から予告していた「みんなで同じ振り付けを踊るコーナー」もあり。『ニートまん。』はあのKAT-TUN上田竜也さんがきゅるきゅる可愛いらしいヴィジュアルだった頃の名(迷)作で、ヒモキャラアイドル・カイトナカムラにはぴったりの選曲。しかしこの曲で提示された振り付けがなかなか、かなり、相当高度な代物で、のちのMCで登場した如恵留さまとしめちゃんにも「あれね、難しい! 無理!」と突っ込まれていた(できなかったみんなたちへの気遣いを感じました)わたしは2公演参加しましたが半分しか習得できなかったYO……。
 ファンの「デジわ」を投影するスクリーンにトラジャメンバーの顔うちわ(公式グッズではなくプラべ写真使用)を表示させたりというメンバー愛放出コーナーもあり。『足跡』ではおそらく彼の自筆のイラストを使った、満開の桜の木のもとを歩いていくトラジャ結成時オリジナルメンバー5人の足跡と、それを追いかける松松2人の足跡のアニメーションが流れてぐっとくる。心なしか追いかける松松の足跡の速度が早いように感じたんですよ。気のせいかもしれないけども、2人が跳ねるように急いで、5人のもとに駆け付けて来てくれたみたい! そして2人を呼び寄せたのはほかでもない中村のカイトさんなので、そこも大事だよなと思う。味のある似顔絵がまた泣かせてきます。
 単体で度肝を抜いたのは『溺愛ロジック』——お札にまみれるアイドルを見る日がくるなんてな! ラスト前の『ミラクルワンダーマジック』にも驚いた。昨年~年始までのJUMPツアー「PARADE」で本家メンバーがクソデカ回転機構に拘束されながら披露した神曲のダンスを見られるなんてな! 本家もダンスするバージョン披露してくんないかな……めっちゃ踊る『ミラワン』とてもカッコよかったんで……。

 8月4日 松田元太 の げんぱら「裸一貫 松田元太」

 今回もっとも意外性のある構成を繰り出してきたメンバー。まさかの開幕アカペラ『Anniversary』に始まり、使用楽曲のチョイスもアーティストを極限まで絞って(Kinki kids、JUMP、嵐、少年隊のみ?)セクションごとに一定のトーンを保つ。一見して間口が狭く感じられるが、ひとたび踏み入れば無限の宇宙「元太WOLRD」がそこに広がっている、そんな印象を受ける公演だった。むろん、ここまでやってきた如恵留さまの公演とも、中村うみんちゅの公演とも全然違う。2日目までで全パターンの属性を網羅したかと思ったら3パターン目があった! みたいな。トラジャってホントに幅広い!
 おげんたくんといえば、過去のグループ単独公演での『Vanilla』や『また今日と同じ明日が来る』のように非常に凝ったヴィジュアルで魅せる演出がおなじみで、ソロ公演ではどのような演出を披露してくれるのだろうかと楽しみにしていたのだが、準備期間の問題でか大掛かりなものは用意できなかったのだろう、センターステージでセットをぎゅっと凝縮して演じた『PINK』、手書き風アニメーションを画面に合成した『キャラメル・ソング』 にとどまり、そのぶんとにかく歌、ダンス、素材のままの松田元が際立った。トラジャとしてもお馴染みの『愛のかたまり』は歌唱なしコンテンポラリーダンスのみ! これが圧巻でした。満月を背負って踊る『Last Dance』もよかった。トラジャくんが「PARADE」から持ち帰ってくれたのが『Entertainment』『め』『ミラクルワンダーランド』『Last Dance』ってセンスよすぎじゃないですか?
 嵐メドレーはファンへの愛をげんたくんの素直な言葉で届けてくれ(『マイガール』で表現された概念の元太担、超レアグッズの「サマパラ2018」アクリルスタンド持ってるッォィイオタクですよね)一転して少年隊メドレーでは、直前のセクションで魅せたピュアでイノセントなアイドル像とまた違う、昭和時代のアイドルが持っていたようなアダルトな表情に切り替わる。どっちも様になっているからすごい。千年延子だっただけはある。
 MCも途中でちょっとよくわからないお着換えコーナーはあるものの、基本は椅子に座ってほとんど動かず、しっとりまったり進行で、応援に駆け付けていたメンバーを舞台に上げることもなく(見学席から声援はあり)たった一人で、自分のテンポで乗り切った。そこもおげんたくんの素材をそのまま、生で味わうような感覚になった所以だろう。後日公開されたYouTubeの舞台裏動画でも「いろいろ考えているから!」とMCゲスト登壇を拒否するくだりがあったし、彼の意図するところが、中村のカイトくんの演出する「一対一」演出とはまた違った、視聴者対演者のみの落ち着いた空間が生み出すことなら、大成功していたと思う。
 そういえば、JUMPメドレー後のMCで『PINK』について「(八乙女)光くんに本番前ぜひ見てくださいって言ったんで、見てくれてるかもしんない!」とほのぼのエピソードを話してくれたのだけれども、配信時間がちょうど火曜日12時回だったため「今はヒルナンデス(生放送)だから見られないよ!!」とツイッターランドで総ツッコミをくらっていた。どこまでも「元太WOLRD」でした。

 8月5日 七五三掛龍也 の しめぱら「しめちゃんのスイーツパラダイス」

 「テーマはSweet」と直前に公開されたYouTube動画で語り、初日朝に公開された会見記事で「見覚えのある赤地に黒いピロピロの衣装」を着ているのを見た瞬間に「確かにSweetだったわアレ!!」とアハ体験をくれたしめちゃん。その上で目玉選曲が「山田さんの例のアレ」(『Do it again』)だと伝えられ「過剰積載では?!」と動揺をくれたしめちゃん。諸事情で序盤を見逃してやっと戻れたと思ったら『Yes!』をやっていて「過剰積載だよ!!」とびっくりさせてくれたしめちゃん。次の回できちんと頭から見たら開幕『Toxxxic』で「もはや法に触れているのでは?!」と衝撃だったしめちゃん。これ例えるならエビフライ・トンカツ・ハンバーグ・からあげにチーズもトッピングした「バカのカレーライス」なんだけども、しめちゃんだからもちろん可愛い系の『Oh My Daring!』『我 I need you』『Koi-wazurai』も盛り込まれて「映えまくり! 特盛バケツパフェ(花火が刺さってる)」も添えてあるんですよ。いや~スイーツパラダイスとはよく言ったもんだ。
 ここまで濃い味で攻めておきながら濃さの方向性が絶妙甘辛ミックスなとこは上手いなぁ。スイーツバイキングにカレーとか飲茶コーナーあるもんね、みたいな。
 で、最大の問題作『星に願いを』。本家キスマイでの文脈だけうっすら聞いていたそれが、誰も照らしていない黄色のスポットライトが、大きなガラス板で区切られたメインステの先の空間にある時点で「察し」てしまうわけですよ。しめしずを。2日後に答え合わせができることを(細かいことはしずパラ感想の方で)
 ぼけぼけぽやぽやのOPショートムービーが全公演別なのもめっちゃ良い。サービス精神のかたまり。MCのグッズ紹介でミニうちわを「手に持てるいいサイズ」と評したり(うちわは大抵どれも手で持てます)、ミニタオルの柄が横向きのままぐわしと掴んで見せてくれたり、自由でした。あと、15時公演で如恵留さまがゲスト登壇したときの、まず「ものまねして」デジわへのファンサとして「ノエルのものまね」を披露したのちに「ご本人登場」をさせる流れが上手かった。Jr.SPくんコーナーへの曲フリとはけ際もとてもかわいかったです。最初から最後までずっと自分が「ヨシヨシ」される側だと思っていたところもかわいかったです。
 

 8月7日 吉澤閑也 の しずぱら「開幕カーニバルですべてをかっさらっていった男」

 出 カ ー ニ バ ル 優 勝 (横断幕)
 ジョークじゃなく、これホントめっちゃ良かったんですよ。わし去年の3組合同『ISLAND FESTIVAL』からの一連の「一発ギャグ」動画でトラジャを「再発見」することになったので、Aぇgroupの福本大晴くんからカーニバルネタを伝授され、それを鉄板芸として雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ一年きちんとこすり続けたのを見守って(?)きてるわけで。ここで最適解な楽曲を用いてカーニバルネタの動きを振り付けに盛り込んだ見事なパフォーマンスに昇華された、その事実への感慨深さが半端ねかった。西の方に向かってテレパシー飛ばしたもん。たいせーくん、君のネタが最高のパフォーマンスになって披露されたやで……」(『DREAM ISLAND』Aぇgroup公演に著作権料1500円を納めながら)。「サマーパラダイス」であることをようやく思い出させてくれた夏曲メドレーに加え、5人目にして初めて最初にちゃんとタイトルコールした人でもある。真面目な人だな。
 肝入り演目である『ミステリー・ヴァージン』のようなダンス(振り付け)に着目したい場面では照明演出にこだわっているのが感じられ、それ以外には自粛期間に練習していたマジックショーや大鏡でぐるりと円形ステージを囲んで360度楽しむ演出を盛り込んで飽きさせない仕様。JUMPお兄たんのオタクもやっている身としては終盤のHey! Say! BESTの『Speed it up』がまさかの選曲で嬉しかった。あなた山田担じゃなったの?! でもいつもコントやオモシロ演出を披露するBEST兄さんが突然ツンプルにカッコ良さだけを推してきた『SIU』はコメディータイガーの彼がかっこつけるには最適な選曲だったのかもしれない。ラスト手前の『明日へのエール』もやっぱりアツくて王道でいいよね。
 全体の印象は 「本日も始まりました少年倶楽部、今回のテーマは『夏』!」でした。大MCでのバックJr.(無所属8名)とのふれあい企画も(絶妙なセンスのタイトルロゴも相まって)少クラ感があった。大所帯とのやりとりをするために如恵留さまは質問コーナーを設けましたが、こちらはクイズ形式で、Jr.くんたちに答えさせる仕様。ボケしろのある出題もよかったし、果敢にボケていく後輩Jr.たちにどんどんツッコミ入れるMCも上手かった。トラジャメンバーや若かりし頃の閑也くんエピソードなども出てきてとても楽しめる企画だったと思う。個人的に小鯛くんの「Q、怒れるしめちゃんの意外な一言は?」への回答「許さないテロンテロン」が好きでした。ていうかYouTube見てくれてるんですね。うれしいね。
 で、問題の「しめしず」共同演出曲『星に願いを』ですが、これはお互いのソロ公演で、相手を欠いた状態でやるから完成されている という大大大天才演出でしたよね。おそらく死に別れているであろう恋人たちを、共通アイテムである大きなガラス板の額縁で同一世界観であることを説明し、その向こうに「いるはずなのに何もない空間」が置かれることで、彼岸と此岸に別たれてもう出会えない存在であることが際立つ。発想の勝利すぎる。階段を上るしめちゃんと床に崩れる閑也が切ねえー……。でも私はしめちゃんがあまりにも殺しても死ななそうであるため「しずやしぬな」と毎回念じてしまっていました。あれ?
 

 8月8日 松倉海斗 の まちゅぱら「ほのぼのカオスの申し子はきみだ」

 もっとも奇想天外なコンサートを披露したメンバー。前情報では「ストーリー性のある構成」「ギター弾き語りのオリジナル曲がある」ことが知らされていて、確かにその通りではあった。確かにその通りではあった。ロック調の選曲で開幕し、何者かに問いかけられるような英語ナレーションがセクションの合間あいまにインサートされて進行する。葛藤しながらも信じた道を進んでいくひとりの人間の姿が描かれ——気づいたときには頭に羽根かざりをつけ、袖なしGジャンを着てローラースケートで5忍を追いかけまわす彼がそこにいた。なぜだ。
 その後も、「メンバーに会いたい」と神様にお願いしたらバックの少年忍者5名がトラジャメンバーのお面をつけ(足りなかった中村のカイトの分は一人二役)ての『TJ Calling』があったり(これもとは『Kis-My-Calling』、つまりキスマイ兄さんのメンバーの名前をコールする曲で、それをトラジャ版にアレンジしたものを、さらに5忍がなりきってやっているのであるから、えーと、ちょっとよくわからなくなってきたな?)……発想の根源は如恵留さまの『UT』と近いと思うのだけれども、表出の仕方がまったく違っていてとても面白い。「ジャニーズらしい」にもいろいろある中、オタクの間では「トンチキ」と呼ばれる部類のコンサート演出で、わたし個人は「ほのぼのカオス」と評しているそれを真っ向からやっていた。普段、YouTubeなどではっちゃけた言動が多いのは松松のうち松田のほうの松であるし、歌心のある面を推していたのは松倉のほうの松であったため、4日の「げんぱら」のようなしっとりした雰囲気を松倉くんが見せると予想され(「バラードばっかりだと思っていたでしょ?」と松倉くん自身の発言もあった。オタクの考えなどお見通しなのだ)、また「まちゅぱら」のようなカオスの雰囲気をおげんたくんに期待していた向きもあっただろう。実際はまったく逆であったわけで、「対局の“あちら”と“こちら”を代わる代わる演じられる理想のシンメ」が彼らのソロコンにも表れていたように思えた。無音の間をおそれない自由すぎるMC(突然側転しはじめる)もいろんな意味で流石だった。バックの5忍とのMCでも自由すぎて後輩の川崎兄が回しはじめるからたいへん。この公演で川崎の兄がよく働くこと、よく働くが少し独特な御方であることも知りました。大所帯グループ少年忍者での苦労がしのばれました。
 そんな感じで愉快に脱線(?)しつつも、終盤で英語ナレの「何者か」が未来の自身であることが明かされ、強いメッセージをもって『星をめざして』『エナジーソング』が歌われ、まさに「今」輝いている瞬間へ回帰する『Summer Paradise』で締める構成。奇抜ながらも不思議と一貫性があった、ような気がする(深遠なる松倉WORLDを読み解けている自信がない)。
 わからないなりに、舞台裏での如恵留さまとのハグが総てかな、と思った。
  

 8月10日 宮近海斗 の ちゃかぱら「覇王とは魔王である」

 満を持してのリーダー、宮近さんのソロコンは、如恵留さまのそれとは違ったプレッシャーがあったことだと思う。が、それより何よりオタクの側が恐れ慄いていたように思う。
 物々しいイントロダクションののちにふらりとカメラのサイドから登場するOP、「我らこそルールです」と強気の選曲『O.N.E』、下から煽る構図、——つよすぎんか。どれほど踊ってくれるのかと待ちわびる我々を前に、ダンスを滅茶苦茶にもったいぶるのもやばい。ほとんど踊ってないのにこんなに強い、けどオタクたちは宮近さんが踊ったらもっと強いこと知ってるんですよ。開始5分の時点でめっちゃビビッてた。そんで、ついに踊り出した『Masterpiece』で、上りに上がったハードルをゆうゆう越えていくわけだから、いや、つよすぎんか。
 そこからまた物々しい間を挟んでの『Rolling days』ですが、目隠し、手枷、白装束、鎖につながれて大登場する宮近さん。どういうことだ?! と混乱するも、ここまでの流れで強すぎる宮近さんを浴びまくっている我々は「ありあまる力を畏れられて封印された系の設定」としか思えないんですよ。罪状があるとすれば「つよすぎ罪」ですよ。軍服風衣装のバックJr.くんたち(こちらも相当強そう)に連行されているにもかかわらず全然「捕まっている」気がしない。「今は大人しく捕まってあげてる」感がすごい。案の定、手枷も目隠しも自力で外し、暴力と流血沙汰の果てに(赤い羽根が額についたままになっていた15時回が特にやばかった。返り血じゃん……)飛び出していく。いやー、誰もサマパラで血が流れるとは思うまいて。とかくこのパフォーマンスがこれまでのどのメンバーでも見られなかった系統の、いうなれば「邪」「闇」「魔」のほうに振った演出で(ダークな雰囲気のものはあるものの「セクシーさの演出」に寄っていた)、それを担ったのがセンターでリーダーのエース宮近さんであることが、おっそろしいなトラジャは……と思う。で、この演出を本来は如恵留さまとやりたかった、というのはどういうことでしょうか。気になって真夏の夜の悪夢に見そうです。
 続く『スクランブル』はJUMPからの選曲として意外にして納得のような。こちらは冒頭と変わってダンスを魅せることに注力し、バックJr.に歌唱をまかせるパートもある。変則的なところが宮近さんらしい。
 「思い出メドレー」はこれまでの宮近さんの歩みを感じられる選曲。ツイッターランドのトラジャ・宮近担が、歴が長ければ長いほどバッタバッタと倒れていった記憶しかない。前情報にあった「宮近ヒストリー」そのままだったのだろう。あと、宮近さんほどとなれば「デジわ」で「遊んで」しまえるということに謎にツボで笑ってしまいました。
 そして大好きな『Your Seed』でテンションがぶちあがった、と思いきや突如始まるコントコーナー。やっぱりやるよねコントコーナー。全身タイツマンをやってた宮近さんだもんね。ショッカーのみなさんはしばらくお付き合いくださ……「マジなゴリラ」って何? それはそれとして『Your Seed』は名曲だな……。
 中盤からも思い出深い選曲多めか。『Where My Heart Belongs』はずいぶん前に見せてもらった少クラで山田さんが歌って知念さんが踊ってたやつ! 『参ったネ、今夜』も併せてショータイムの開幕に大興奮。ここからはひたすら宮近さん踊る踊る。見ていて気持ちいいくらい軽快なステップを刻みますよね。フィギュアスケートの高橋選手が「世界最高峰のステップ」と評されていますが、地上のダンス界では宮近さんに捧げたい称号だと思う。
 『To my homie』は着替えながらごしょごしょなんか言いながら黒電話(手前にスマホがあるのになぜか最初は黒電話)(着替えたジャケットを椅子にひっかけたり水分補給がグラスの水だったりと妙に細かい生活感)をとるとメンバーからのコールだったという演出が洒落てる。「閑也のバースデーらしい演出」も事前予告ありだったけどこんな形でメンバーを登場させるとは。回ごとに登場メンバーが違って、如恵留さまだけが「配信中に申し訳ないけど」とちゃんと断り入れてくるのが面白かったです。そんなメンバーとの微笑ましいやりとりが演出されたあとの『間違っちゃいない』 はグッときました。ジャニーズWESTの曲で、以前「レコメン」に出演したときにも好きだと言っておられましたね……。
 最終パート、エモのあとにバチバチに踊る盛り上げ曲を挟んでくるのは中村のほうのカイトと似ていてWカイトを感じました。若干の照れと、コンサートはブチ上がって終わりたい派らしいところと。
 ソロ公演最終、8月10日18時の『Together now』は、おおかた予想した通りに「リアル集団幻覚」であったメンバーが全員集合。予想通りではあったものの、この7日間の公演を経て全員そろった姿を見るとまた格別の感慨があり、後日公開されたこの場面の舞台裏でのやりとりもアツかった。「迎えに行くか」なんて完成されたシナリオの台詞のようじゃあないですか。
 
「生で見たかった」かもしれない、けれど「生では(チケット当選確率的にも演出面でも)まず見ることが叶わなかった」であろう推したちのソロ・コンサートは、「この時世だから」見ることができたもので、今まさに私が彼らを見たいと思っていたから、その場に居合わせることができたものだ。すべてはタイミングだ。この類いまれな僥倖に、しばし浸っていいものとする。よき夏であった。
 9月26日・27日の「ENTER1234567」配信も楽しみですね。


Travis Japan【緊急企画】「Summer Paradise 2020」ウラ側見せます!