例えばあなたが下北沢でロックバンドのギターボーカルをやっていたとしても、ロミオやハムレット、リヤの道化を演じていたとしても、私はきっとどこかのタイミングであなたとその歌声に惚れていたと思っているし、例えばあなたがちいさなライオンの王子様から始まって、ファントムや、ジーザスや、ミストフェリーズやスキンブルシャンクスあたりを演じていたり、あるいはマリウス、アンジョルラス、もっとその先でジャン・バルジャンやジャベールを演じていてもきっと見つけられたと確信できる。私にはアイドル以外にも好きなものがたくさんあるし、どのジャンルにおいても同じ手触りのものを好きになるから。1/9の確率なのに百発百中で見抜いた己の運命力を信じているキモ・オタクだから。
私が7年推してるバンドマン、バンドマンだけど写真集に載るし、本人役で映画にも出演しています。ミュージックビデオではまあまあ演技もしてました。ラジオ番組でコーナーもってたときはいつもヘンテコで興味深い話をしてくれました。ギター抱えて歌いながら踊ります。まるで演じるように歌います。しなやかで艶やかなマイムが大好きです。隔週の生配信でもいろいろな歌を歌ってくれます。暗い歌、怖い歌、性愛の歌も、希望も絶望も、かわいらしいゆるキャラソングも。バンドじゃなくなったときもありましたが、ソロ・アーティストとしても魅力的なところをたくさん見せてくれました。この人の歌声じゃないともう満足できないなって思います。それくらいの人です。
彼が、たとえ渋谷の薄暗いライブハウスで歌うバンドマンでなくて、きらびやかなステージで銀テープ舞う中踊るアイドルであったとしても、私は彼を見つけ、同じように愛したでしょう。どのジャンルでも同じ手触りのものを好きになるから。己の運命力を信じているオタクだから。
アイドルであることを特別に思いません。バンドマンであることを特別に思わないのと同じように。スポーツ選手でも、医師でも、弁護士でも、教師でも、それ以外の全ての職種でも、無職でも、大人でも赤子でも、結婚していてもしていなくても、性自認や性指向がどちらでも、どちらかでなくても、同じです。同じだけ価値があり、同等に無価値です。そして私は、すべての善き人に、好き人に、「あなたはあなたであるだけで100点満点だ」と言いたいし、そんなことは私が口に出さずとも自明だからほんとは言わなくていいんだってことも知っています。
あなたのやわらかさを愛しています。気高さと正しくあろうとする心根を愛しています。その歌声を、凛とした佇まいを愛しています。自分の仕事に誇りを持ち、愛することを肯定するあなたとあなたを愛しています。
そんな愛しいひとたちはたまたま、そこにいて、そこにいる状態で出会った。それだけです。
あなたが今幸せであることを望みます。毎日おいしく食事をし、不安におびえず健やかに眠りに就けることを望みます。それが叶わないのであれば叶えるために叶えられるところへ行ってくれてかまわないし、その結果として私の目の前から姿を消してもかまわないと思っています。あなたたちがエンターテナーとして目の前にいるその間だけ、見つめ続けることをしていいと決めて、ただしく対価を払って見つめること。それが私の決めた、私への誠実さで、あなたたちへの誠実さです。
あなたとあなたへ、改めてこの言葉を贈ります。
アイドルでいてくれてありがとうとか思わないけど愛しているよ
