王と道化とその周辺

ちっぽけ嘘世界へウインクしておくれよBaby

2022年買って良かった音源 ~推しドルがデビューして推し盤がサ終宣言したSP~

前略、推しドルが留学したと思ったら全世界デビューしました。

 どうも、2019年春の合同魂で「如恵留推し」を認めてから約3年、年度末に北米留学を宣言しあれよあれよという間に海を渡っていったTravis Japanが、あれよあれよという間に現地のダンス大会で好成績を修めたりおさめなかったり、北米のオーディション番組に出演して好評を得たり得なかったりし、秋の口にはデビュー宣言が成され、あっという間すぎて正直よくわかんねーけどすごいことはわかるくらいの感じで推しのデビューとやらを見届けました、オタクです。
 この留学は「北米のダンススクールで技術を磨き、海外で結果を残してくる」修行の旅であると語られていた。彼らにとって国内での成果は、小目標である「デビュー」に結び付くほどのものではなく、そこに至るまでの「箔」なるものを付けなければならないのだ、と私は受け取っていた。推しのデビュー実績の有無にまったくこだわりはないし、デビューするしないに関わらず、修行とやらも真に彼らの身となるなら是非行ってきてほしい。世界基準とやらに触れていくのは善きことだ。あと、どうにもこの頃の本邦はキナくさすぎるのでなるべく年内には帰らないでほしいというノリでいたので、如恵留さまが渡米前に宣言した「最速の帰国」をそのものずばり「レコード会社との契約=デビュー」で成し遂げてしまったことにビビりつつ、この「只者ではなさ」に途方もない魅力を感じているのだと再認識させられた。北米での活動に、如恵留さまの英会話力は不可欠なものだった。

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 鬼気迫る――しかし彼らの本分「観客を驚かせ、かつ楽しい気分にさせるエンターテイメント」は維持されたこのパフォーマンス、そしてその前後で彼らが見せた「人となり」、それが審査員や3000人のオーディエンスを沸かせた。トラジャの表す「アイドルらしさ」がシンプルにお出しされている。二次審査の結果は芳しくなかったが、それでも知名度を上げることはできた。そして2回のAGT登場の間に、「World of Dance」というダンスの世界大会で全米4位・世界9位のランカーとなって、ハリウッドに本社を置く北米のレコード会社の目にとまり、デビューした。全世界「配信」デビューである。
「CDの発売」ではない。音楽配信サービス・サブスクリプションサービスでの購入やストリーミングで、世界中どこにいても(ネット環境さえあれば)彼らの音源をきくことができるのだ。日本でも、L.A.でも、インドネシアのトラジャ村からでも!
 というわけで、わたくしついにサブスク導入いたしました。(地味にめちゃくちゃでかい変化)

JUST DANCETravis Japan

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 その名をもらった時から、「ダンスを武器とすること」を宿命つけられた彼らのデビュー曲は、高難度でスキルをバチバチに見せつけるクールなナンバーではなく、軽快なダンスチューンだった。
 そのティザーが公開された当初、レトロなイントロやロゴが80年代回帰で流行を押さえていることはわかる程度だったが、サビから入る歌いだしで一転、今風の音にぐっと寄っていく。もっと嵐の『Turning Up』くらいに行き切ってもいいのではと思ったが、WOD予選で初公開だったJr.期最後の新曲『Party up crazy』がそっち寄りなので趣向を変えたのだろう。
 私が何より「世界デビューしたこと」を痛切に感じたのは音の良さだ。ベースやばない? 現在ワタクシの環境で一番いい音が出るのはPC用大型モニターと化したSONYBRAVIA(テレビ)なんですけど、これでMV再生したらめっちゃええ低音聞こえてきてびびった。やっぱこう、本場は「音が芳醇」だなと、わざわざL.A.まで出かけて行ってレコーディングするアーティストが多いわけだわと。リリース当日にはtofu beatsとyaffleのremixも同時配信された。突然の告知が音楽好きに衝撃を走らせたことは言うまでもない。
JUST DANCE」は、彼らがL.A.で学んだ「Millennium Dance Complex」の掲げる「NO RACISM, NO SEXISM, Just Dance」を思わせる。歌詞もその言葉通り、「あなたがどこの誰でもかまわない、踊ろう!」と誘う。夢ハリのタップダンスにまで「みんな一緒に!」とファンを巻き込もうとするトラジャらしい世界観だ。MVにちりばめられたこれまでのトラジャの歩みの欠片や、おなじみの円陣コール「賛成!」の採用もエモい。全員留学からの海外フェス・ダンス大会出場だとか、SNSでデビュー告知だとかレーベルが海外企業で配信しかないだとか、様々な「異例」を更新しつつ、ジャニーズのアイドルTravis Japanがこれまで見せてきた精神性はひとつも変わってはいないのだ。
 何はともあれ、デビューおめでとう。
 

『まわりまわる』ササノマリイ

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 2020年、水面下でがっつりハマっていたとある中国発のアニメ『羅小黒戦記』(映画を2回見に行き、Blu-rayを購入した)の、同制作スタジオによる新シリーズ『万聖街』日本語吹き替え版が昨年ついにTV放映された、その際のEDテーマである。
 この音の手触り……聞き覚えがある!! と調べたところ、アーティストのササノマリイとは『戯言スピーカー』等で有名なボカロPのねこぼーろ氏であった。道理であの頃のボカロのにおいがするわけだ、と腑落ちした。
 あの頃のボカロ、というと早口でまくし立てるような超高速デジポップ・ロックのイメージが強い。その一方で、抑えた音数とBPMで繊細な感傷と鬱屈を表現する流派(?)もあり、インターネッツの片隅の思春期どもは、そんな楽曲で傷ついきやすい心を慰撫しながらコメントを右から左へ流したのだ。
 この曲はアニメの雰囲気そのままに、キラキラしたプラスチックビーズを散りばめたようなサウンドと柔らかくやさしい歌唱が印象的な作品だが、うっすらと漂う繊細な感傷の空気が、やはり当時の楽曲群にあったそれを思い起こさせ、「おおきな思春期ども」として聴いていた僕にある種実家のような安心感をおぼえさせたのである。  

『AMBUSH』DAgames

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 DAgamesとの初邂逅は確か某動画に投稿されてた某漫画の手書きMADだったかな。
 同人音楽というと「東方アレンジ」のような、原作楽曲のアレンジだったりインストへのボーカル追加だったりを想起するところ、こちらはゲームをモチーフにイチから作曲するというスタイルで活動されている方。こういう方向での二次創作だってないわけがないのに、彼の活動を知ったときはなんだが新鮮な気持ちになった。扱うジャンルはハードなラウドロックから高速ピアノのエレクトロサウンド、時にジャズもこなす多彩さだ。『Get Out』『BENDY and INK MACHINE』なども有名。これまではYouTubeで見聞きしていましたがサブスク導入によりようやく手元に置くことになりました。
 この楽曲はMVを見てわかる通り、みんなだいすき宇宙人狼こと『AMONG US』を題材にしている。踊るクルーたちがもちもちしてて可愛い。おばけになっても可愛い。
 

『健音 #1 -未来-』健康

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 2021年に発足しほぼ同時にプレ音源を配信リリースした、松本明人と悠介からなる音楽ユニット「健康」。検索性の悪さでは「3」の上を行くと名高い彼らの1stフルアルバムがこの『健音 #1』である。発足時の特別配信公演で披露されたうちの6曲に加えて、新曲6曲(うちインスト4曲)とボリュームたっぷりで、端から端まで隙なくみっちりと健康の仕事が詰め込まれた盤になった。正統派ロックサウンドからEDM、演奏がつらいことで有名なプログレ的超展開楽曲、ミラー構成の楽曲などジャンルや表現は多岐に渡り、水音のSEなど細部にもこだわりを感じる逸品である。(「バケツの水に物を落とす音を収録するだけのインスタライブ」も懐かしい)『針金』に唄われる「俺/お前」はモチーフとなった映画の主人公たちのようでいて「健康」のお二人のようでもあり、エモがにじむ。
 2022年には東名阪ツアーを行い、さらに秋には、1st版と同じ映画『アカルイミライ』を元ネタにした新曲5曲を加えた「ディレクターズカット版」のような公演を行った。この新曲群がまた、「正規配給版にR指定がかからないようカットしたバイオレンス描写」と「やや冗長になりそうなのでカットした長回しのシーン」みたいな様相でそれぞれめっちゃくちゃ良かったので、関係各所、どうか頼みますよ(圧)(サポ麺のユナイト莎奈さんからの「圧をかけると盤が出る」との言葉に従いました)

 ちゃっかりライブツアーの円盤も出ているぞ。ヴィジュアル表現にも凝りまくっているユニットなのでこちらも是非。

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『BLACKSTARⅢ』ブラックスター ーTheater Starlessー

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 どうも、2021年最推し盤麺がいきなりソシャゲの中の人となってステージ歌ったり踊ったりしました、オタクです。
 アイドルや役者をモチーフにしたスマホ媒体リズムゲーであふれるこの時代、かつ舞台・ステージ化が当たり前になったこの時代に、キャラクターボイスとしての声優とキャラの歌唱楽曲のシンガーをほぼ完全に分離したコンテンツで売り出しているブラスタこと『BLACK STAR』。このプロジェクトがなかなか面白いことをやっているとちゃんと気づいたのは2022年開催のライブツアー「BLACK TOURⅡ」に丸腰参戦をかましたときだ。いやぁ、おったまげたね。
 KONAMIアーケードゲームBEMANI」シリーズで音楽のいろはを叩きこまれたワタクシが思うに、いわゆる音ゲーの音楽の良さは「ゲームとして幅を出すためのバラエティ力」と「ゲームであるがゆえのポップさ」だ。ひとつのパッケージに色々なジャンルが揃い、ジャンルがバラバラであるからこそ各ジャンルの特色が最大限に引き出され、かつゲームというポップ文化にあるためのキャッチーさは絶対に忘れない、それが音ゲー楽曲なのだ。
 ブラスタのそれも勿論それらの要素を備え、各チームが担当する各ジャンルの音楽の、一番ポップでキャッチーなところをバシッと当ててくる感じがたまらん美味さで、それが一挙に味わえるのが音ゲーのサントラ。要するに「パスタと中華とカレーと寿司とデザートのいっちゃんおいしいとこを食える最高のビュッフェ」なのである。
 購入したのはゲーム内チーム『K』の特典盤つきのver. なぜかKとしては新参の夜光くんがジャケのセンターをぶち抜いていて驚きの仕様。我が最推しである夜光シンガー・松本氏歌唱の楽曲『沈まぬ月』はエモ100%のミディアムバラードで、抑えて抑えて抑えて抑えて終盤に爆発するのがすさまじい。(ライブパフォーマンスではさらに大大大爆発する)あと、やはりショーテイスト・ミュージカルが好きなので、特典盤収録の『ひらひらり』がイチオシですね。完全に『Endless SHOCK』のデドアラシェイクスピアの悪夢のくだりですよこれ。チームKってかブラスタ好きな人ぜったいSHOCK見た方が良いよ(なんの話)
 

『Make Your Choice(side EVEN)』内『MASTERMIND』 晶&夜光

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 なんか投票で上位だったシンガーのシングルが出る企画だったらしいが投票とかもう色々なアレアレが散々で懲りごりだったからいっこも情報いれてなくてなんもわからんのだけどやこくんに投票してくれた人ありがとうめっっちゃありがとう「太郎さんと特撮の主題歌唄ってるときの明人さまください」って言ったときに貰えるやつでめっっちゃ嬉しいありがとう。太郎さんもありがとうコラボライブ超よかったありがとう夜光るピックは買えへんかったけど!!!!(通販!!!!)  
 

2022年冬、10年来の推しバンド、真空ホロウが「活動終了」宣言をした。

「バンドとしてやることはやりきった」との由であった。
「やることをやりきった」と言われて思い当たるフシがまったくなければ、「ちょっとちょっとそりゃあないぜ」とツッコミ裏手パンチを食らわせてしまうところだが、どっこい2021年上半期のリリースラッシュとバンド外活動を鑑みれば、「それはそうかもしれんなぁ」と頷くよりほかはなかった。2022年頭からの月例企画「15+1」がバンドの歴史を遡っていくような、総決算のような公演だったことも明かされてしまえば合点がいく――そして、なによりの論拠は2021年末のクリスマスに開催された「KANZEN PLUGLESS LIVE」公演ラストで新曲『無限回廊』を聴いたときだった。わたしの感想は率直に「最終回かと思った」だった。ただ、そのときは先にいくつも予定が控えていたから「“最終回”ではなく、“タイトル回収”回である」と結論づけたのだが――タイトル回収回は概ね物語の折り返し~やや終盤戦に訪れるものだ。改めて振り返ると、その通りにことは運んだのだった。
 翌2022年中は完全新規リリースがなかった。その代わりのように毎月1度の弾き語り公演があり、そしてこのep.が、リブートされて戻ってきた。

『真約・Slow and steady』真空ホロウ

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 10年と半年ほど前、私が真空ホロウにハマったそのときの最新作だった『Slow and steady』の「真約」版である。2012年当時発売したそれは、タワレコのみの数量限定販売で現在は中古品でしか流通していない。(※YouTubeMusicで聴くことは可能)「ヤフオクでプレ値がついててムカついたから」がリブートの理由だと12月のワンマン公演では冗談半分本気半分に語っていたが、再流通が公演当日のみの会場限定無料配布という、さらなるプレミアを呼ぶ仕様だったのはちょっとどうなんだと思わなくもない(笑)とまれ、入手困難でありながらライブで人気を誇る3曲がここ最近(「おなご」・ブラスタ以降)のファンも手元に置けるかたちになったのは良かった。
 さて、具体的にどう「真約」されたのかというと、まず現体制では不在であるベースパートにここ数年ライヴでサポートを務めている是永亮祐氏、盟友CIVILIANの愉快なベーシスト純市氏、元Sazagiの雲丹亀卓人氏が1曲ずつゲスト参加し、それに伴ってかなりアレンジも変えられている。MVも公開されたシンデレラコンプレックスはオリジナル版にはなかったスラッシュメタルのような趣き(MIZUKIさん曰く「斧を振りまわすようなベース」?)で暴れっぷりがより凶悪度が高まっている。10年かけて醸成された乙女の執念がそうさせているのか? あと、10年前から上手かったのにもっとずっとさらに輪をかけて歌が上手くなっとる松本氏のすごさよ。旧版の音源自体はいちおうYouTube Musicで聴けるので、未所持の方も聴き比べてみてほしい。

 
 
 ――ところで、お気づきの方も多いだろうが、この毎年の音楽記事は「買ったイケてる音源を紹介したい」というタテマエで「真空ホロウと松本明人の仕事を語りたい」欲求を満たすための場所でもあった。来年、再来年もこのシリーズ記事を書くのかどうかは、松本氏の今後の活動次第なのである。
 願わくば、来年も再来年もその次もその次も、記事を書けたらいいなぁと、思っておりますですよ。

(とはいえ、歌唱曲3曲入り! のブラスタの4thアルバムが確定しているので、いちおう来年も更新することは決まっている。おそらく「真空ホロウ」の名がクレジットされた最後の盤になる。ありがとうブラスタ。ありがとう夜光くん。きみが様の一部としてあってくれてよかった。いくら感謝してもし足りないよ。本当に本当に、ありがとうね。)