王と道化とその周辺

ちっぽけ嘘世界へウインクしておくれよBaby

慈しみと愛のあるところ(あるいは、私は如何にして川島如恵留を推すこととなったか)

 どうも、前段から続けて読んでいる方もこの記事を単発で読んでいる方もこんにちは、今日もタイトルが無駄に大仰なオタクです。
(「沼」というスラングは好きではないけど)これは俗にいう「沼落ち記事」なのだと思います。オタクはみんな新しいコンテンツにハマってジタバタしているときのことを語るのが大好きだし、ジタバタしているよそのオタクを観察するのが大好き。それが自分と同じ地点へ到達しようとしているオタクならばなおさらに。
 この記事は、そんなトラジャ担のみんなたちに需要があると思って書き始めました。ただ、自分で言うのもナンですが、わたしはかなり特殊な部類のオタクであると自覚しているため、当記事を読み進める前に、このオタクのオタク・スタンスとそこに至るまでの過程を端的に述べた記事約3万字中後半2段落だけでいいので目を通していただけるとありがたいです、が、それでもやっぱり長すぎるので手短にまとめます。
 
・JUMPの圭人担を1年半ほど名乗っていましたが自担の活休をきっかけに「ジャニオタ」の制度から降り、「担当」という言葉も使わないことにした、岡本圭人とJUMPとその他の素敵で愉快なお兄さんたち(アイドル、バンドマン、二次元など)のオタクです。
・推しくんは現在留学中ですが別に戻ってきてくれなくてもいいよと思っています。お空も海も繋がっているので、ありがとう~世界のどこにいても推しくんは推しくんです。元気で生きていてくれればそれでいいです。

 以上、前提(この時点でオチが読めてる人、あなたの予測はおそらく正しい
 以下、本題です。
 
 
 

わたしとトラジャ、もとい、前回までのおさらい。

 前記事にもあるとおり、Jr.チャンネルへの入り口になった動画がストと合同の花火大会企画だった。そのため、トラジャについてはどうにも不憫で、ちょっと要領が悪い(名前テロップの一件)けど、ほわほわとした雰囲気がかわいらしく、メンバー同士の絡み方(ベチャベチャするときのベチャベチャの仕方)(メンバー同士で愛してるとか大好きとか愛おしいとかバーカ♥ とかすぐ言うし、無意味にハグするし人の肩に顎乗せるし広い空間でも何故かぎゅっとまとまってるし椅子が足りなきゃ誰かの膝に乗る)、素直にストレートにお互いを讃えあうところも、JUMPさんっぽくて親しみやすいグループという印象を持っていた。
 現在の7人体制に至るまで紆余曲折あったらしいが、今の彼らはとても落ち着いて見えるな。この中ではのえるさんがダントツ好みだな。動画ED曲を作ろう回で指揮をとってるところとか超いいな。幼稚園の先生がピアノを弾いてみんなでお歌を歌っているようだ。ほらJUMPが10周年アリーナツアーで『Star Time』歌ったときの、いのおさんのキーボードの周りに集まって、あんなに広いひろいステージの上でちいさく引っ付きあって歌うやつ。ちょうどあんな感じだ。あの演出トラジャでも見たいなぁ。話が逸れた。
 
 
 ……とまれ、運命の分岐点となったSSA合同ライヴの配信を見ようと思った動機のうち「トラジャを見たい」の割合はそこまで大きくなかった。なにわ男子の『We are~』が前日時点では一番の目当てだっただろうか。大半を占めていたのは「せっかく配信で見られるなら見とこう」というライトなノリだ。 「本気のパフォーマンスで惚れたら決定打」という意識からYoutube配信動画においてはどのグループのものも本気のパフォーマンス動画は迂回していた(WEST目当てでたまに見ていた『少年倶楽部』もJr.のパフォーマンスパートはなるだけスキップするという徹底ぶり)ため、予習なし、3グループとも完全に「初めまして」である。
 
 

狂気のコンテンツ、「ISLAND TV」という罠。

 さて、無事「ISLAND TV」のライブ配信に課金した私は、そこでようやくISLAND TVというサイトのメインコンテンツであるアイドルたちが撮影した動画群を直視することになる。YouTubeのチャンネルはずっと見ていたが、こちらのサイトを利用するのは初めてだ。つべよりもラフな感じで動画を投稿しているらしい、というのは小耳に挟んでいたが、実際に目の当たりにすると、ラフを通り越した究極の野放図がそこには広がっていた。
 公演前後の挨拶や、TV番組出演時の番宣など、長尺のものもあるにはあるが、多くは数分、10秒にも満たない動画もある。そして数秒の動画にはむろん、内容と呼べるような内容はほとんど無い。ただただ、可愛いアイドルたちの姿が無造作に放り出されたヤバイ空間だった。しかし、どんなに内容がないようであっても、1分1秒でも長く推しの姿を見ていたいと願うオタクにとってここは楽園なのだ。この世の最果てにある夢の島なのだ。
 こんなヤバい薬のようなコンテンツを隠し持っていたなんて。慄きとともに膨大な量の動画群を眺め、配信までの時間はここで消費されることとなった。
(ここでひとつ懺悔しておくと、4月11日投稿の某動画で激しく動揺してツイッターランドの検索欄に「のえしめ until:2019-4-12」と打ち込んだのは私です。)(みんなたちがめっちゃ動揺してるのがわかってよかったです。)
 
 

そのとき、光が飛び散った。

 コンサート開幕後、17時以降の心の流れは、僕がいつも壁打ちしているツイッターランドの壁に書きつけられた実況ログをほぼそのまま張り付けることにする。より臨場感をもって僕の精神状態を味わっていただけるだろう。

なにわの歓声すご
午後5:31 · 2019年5月26日

??、!?
午後5:33 · 2019年5月26日

一瞬スーパーデリケート状態になった
午後5:34 · 2019年5月26日
※ステージ上でアイドルたちが急に至近距離で見つめ合うなどのパフォーマンスをおっぱじめてオタクがギャーと叫ぶことを指す

スノーマンのビバナイ
午後5:36 · 2019年5月26日

らうーるがセクシーにふっかを誘ったぞ
午後5:38 · 2019年5月26日

なるほど山田涼介とシンメだった男・・・
午後5:40 · 2019年5月26日

なにわくん ウエストよりおじゃんぷさん寄りだ
午後5:42 · 2019年5月26日

なるほどおまえさまたちが噂のはしじょ
午後5:46 · 2019年5月26日

正直いちばん怖いのとらじゃ
午後5:51 · 2019年5月26日
※この時点で薄々感づいてはいたらしい

のえるさん宝塚の男役みたい(?)
午後5:53 · 2019年5月26日

ちゃか「みんな一緒に!」俺「なにを?!?!?」
午後5:54 · 2019年5月26日

そしてこれが吠えるのえる
午後5:54 · 2019年5月26日

背中に定規入ってんのか
午後5:55 · 2019年5月26日

またスーパーデリケート
午後5:56 · 2019年5月26日

おげんげんたまにティ~に見えるな
午後5:57 · 2019年5月26日
※ケンティー中島健人/Sexy Zone)のこと

あらかわいい曲もやるのね
午後5:58 · 2019年5月26日

ひーくんカワイイ!!
午後6:01 · 2019年5月26日

イケメン大渋滞だ!
午後6:04 · 2019年5月26日

そういやスノってセンターが赤じゃないんやな
午後6:04 · 2019年5月26日

みやちかくんとひーくんからセクシーサンキュー入りました
午後6:07 · 2019年5月26日

しめちゃんを見たぼく「そうだよおまえさまがレディーダイヤモンドだよ・・・」
午後6:09 · 2019年5月26日

ふっかはカワイイよ!!!!
午後6:12 · 2019年5月26日

のえるさんいつ抜かれても背中に定規入ってるみたいな姿勢してはる
午後6:13 · 2019年5月26日

うたうま選抜か?
午後6:13 · 2019年5月26日

しょっぴに対する「ウエストのバラエティーから入ってライヴではまちゃんの歌を聞いたとき」の気持ち
午後6:15 · 2019年5月26日

ラウールみちえだのアミーゴは誰が決めたんだよ罪深いだろ
午後6:15 · 2019年5月26日

ラウールに半脱ぎジャケット教えたの誰だよ罪深いだろ
午後6:16 · 2019年5月26日

衣装かえてもバンダナは維持なのかだてさま
午後6:18 · 2019年5月26日

あーーー待って待って待ってバンドコーナー入るか
午後6:19 · 2019年5月26日

楽器は困りますお客さん(こっちが客だよ)
午後6:20 · 2019年5月26日

とりあえずレスポではないですね(冷静になった)
午後6:20 · 2019年5月26日
※前情報で松倉くんのギターが黒のレスポールだと聞いていたため。筆者は黒レスポ遣いに弱い。

さっくん指弾きですとな??!??!
午後6:21 · 2019年5月26日
※指弾きベーシストにも弱い。

にしばたくんにすごいセンターのパワーを感じる
午後6:23 · 2019年5月26日

なにわくんおじゃんぷさんレベルでクセの少ないきれいどこ揃ってるけど抜きん出て解像度(?)が高いな
午後6:25 · 2019年5月26日

きたーーーー男の子
午後6:25 · 2019年5月26日

そりゃ男子だもんな 男の子やるよな
午後6:26 · 2019年5月26日

本家はこの一回りくらい上で全力ぶりっこしてるんだよな・・・と思うと本家はすげぇやな・・・
午後6:28 · 2019年5月26日

一回りは言い過ぎたか 平均プラス10歳くらいかね
午後6:31 · 2019年5月26日
※もうちょっと差は小さいどころか丈一郎さんにいたっては先輩であると後に知る

配信尺でいちばん若手のなにわくんがいちばん長くパフォーマンスしてるの、なかなかの待遇
午後6:34 · 2019年5月26日

一公演の配分としては後ろほどメインディッシュなのも確かだからとらすのは真課金(本公演に行け)枠なのもわかるが、浮動層が今すごく勢いついてるなにわくんに向くことも意図してるか?
午後6:39 · 2019年5月26日

・しょっぴのおうたがうまい
・のえる様が出てきた瞬間宝塚のレビューが始まったのかと思った
・のえる様の背中には常に定規が入ってる
・可愛い選抜に巻き込まれて自虐する最年長ふっかへの「そんなことないよ!」「かっこいいよ!」フォローが新鮮な感じ
・しょっぴのおうたがうまい
・西畑くんの顔
午後6:49 · 2019年5月26日

 
 
一夜経て、いちばんトラジャの検索をしている
午前7:31 · 2019年5月27日  
 

 以上。
 言及率が最も高かったのは誰か。見ての通りである。

如恵留さまのどこが刺さったのか。

 一言でいうと「ステージの上の彼の佇まいが圧倒的に美しかった」だろう。
 彼、めちゃくちゃ姿勢がいいというか、いつ何時カメラに抜かれても背筋がシュっとしていたんですよね。振りも指先まで神経が行き届いていて、相対的にまわりが野暮ったく見えてしまうくらいに佇まいが美しかった。ファーストインパクトはさきの段でも取り上げた夢ハリでセンターになるところですね。その瞬間だけ宝塚のショー始まってた。いやー美しい。今のスタイリングめっちゃいい。前髪分けて額を広く出してるのがディモールト、ディモールトいい。
 この日を境に「のえるくん・さん」だった呼び方が「如恵留さま」になりました。
「様」の称号は個人的に特別なものだ。公式やファンから愛称として「様」呼びされているお方々(天祥院英智さま、淳太さま、舘さまなど)は基本的に推しになりがちだったが、このような愛称をもって呼ばれる方々の自己プロデュースの顕れ・パフォーマンスの特性は「フランクよりもロイヤル」「豪快(パワフル)よりも優美(エレガンス)」「エロではなく妖艶」「踊(跳躍)ではなく舞(回転)」だろうか。
 WESTでは淳太さまのスタイルとパフォーマンスを推している僕なので(お察しの通り「綺麗なお姉さん♂」が好きです。そりゃあな!)、春の単独公演で如恵留さまが自身プロデュースコーナーにあの『TAMER』を選んだと聞き及んだ時点で、実際のそれを見てもいないのにパフォーマンス面での「推し」を確信していた。彼へと至る道程は脇道も横道もなく、最初から綺麗に舗装された一本道だったわけだ。
 
 
 興奮冷めやらぬままの翌27日、ここでさらに如恵留さまの「様み」を加速させる動画が「ISLAND TV」へとアップされる。
 
「関西の推しメン」こと福本大晴くんに一発ギャグを伝授してもらう、という主旨の動画だった。福本くんのことはWESTのライブ円盤で「あの伝説のワイパー」をさんざんいじられていためちゃくちゃ心臓の強い関西Jr.くんとして覚えていた。そんな彼とのまさかの再会である。
 アイドル無法地帯こと「ISLAND TV」の動画の中では抜群に内容がある動画だ。それも「独特な感性をお持ちのお姫様に異様に気に入られ旅た芸人が、貴族の屋敷に突然まねかれてせがまれるままに芸を披露してはキャッキャと喜ばれて困惑しているの図」だったのだ。
 福本くんにグイグイ迫る如恵留さま。おそらく未だかつてない厚遇(?)を受け、あきらかに困惑している福本くん。何故か乱入してくる宮近さん(何故なんでしょうね。自撮りカメラをパスしてるのかと思いきや違うようだし……?) 「(たいせいくんは)たいせいくんだもんだって!」「好き!!」「両手に花!」
 これらが1から10まで全部ツボだった。そんなことあるぅ? ってくらい端から端までツボだった。「嘘でしょ」って100回くらい言った気がする。あんなにシュッとしててエレガントなのに(だからこそ?)まるでわがままプリンセスのように芸をせがんで、ワイパーや骨伝導みたいなシュールなネタ(断わっておくと、僕は福本くんのネタむっちゃ好きです)でキャッキャするなんて、そんなことが、そんなことがあるのか。

 トラジャを「再発見」した私はさらに、一度見たJr.チャンネルを頭からもう一周しはじめた。「再発見」だらけだった。彼らのもつ主力コンテンツがネット上の「ジャニーズJr.チャンネル」であったことがここで大きな功績をもたらした。意図をもって録画し、残しておかなければならないTVのバラエティー番組だったら、急覚醒した際に頭から見返すことは容易ではないからだ。
 顔と名前が完全一致する前にうすぼんやりと見ていた初期の動画も、しっかり一致させた後に見直すことで、解像度が劇的に上がった。「あーここでこんなこと言ってたんか」「ここのリアクションめちゃくちゃ興味深い」「『じゃあちょっとエッチに脱ぐ』って何だよ?!」などなど。そして、一周目のときは「全3回で重厚そうだし、このノエルという人にはきっとハマってしまうだろう時が満ちるまでとっておこう」とスルーしていた動画をついに解禁した。そしてそれは読み通りに、時が満ちるまでとっておくべき動画だった。


Travis Japan【川島如恵留のトラジャ旅】その1 ~トラジャがトラジャへ~  
 「トラジャ旅」とは、ファンレターで「トラジャ村」の存在を教えられた如恵留さまが、プライベートの時間を使って単身インドネシアの奥地(現地空港からさらにバスで片道10時間)「トラジャ村」に乗り込み、英語力とコミュ力を駆使して現地の方にガイドを頼んで、伝統的なお葬式やお墓の観光をしたり、ちょっと独特な食リポを披露したりしなかったりしつつ、メンバーへのお土産にメンカラのTシャツを買ってくるというトラベルドキュメンタリー動画である。

 ……「時が満ちるまでとっておく」ことにしたとっておき動画はやはり格別の力をもって私の精神を根こそぎなぎ倒していった。こういう独特の方向から訴えかけてくる人、好きにならないわけがない。まずこの企画を立てようと思った時点で、端的にYouTubeの使い方がうまい。かしこい。新しい知識を仕入れることに関して貪欲な姿勢、いい。『世界ふしぎ発見!』でミステリーハンターしてほしい。しっかり計画立ててるのかと思いきやけっこう行き当たりばったりなことしてるのもいい。あと地味眼鏡。いい。すごくいい。旅先でメンカラのTシャツ買ってお土産にしてるとこも、いい。どっかで聞いたことある話だなって思ったけど。どっかで聞いたことある話だなって、思ったけども。
 
 それから、またまたすごいタイミングだが、興味を持ってから間を置かずに全国区のTV番組へゲスト登場した。当人待望のクイズ番組で、緊張しながらもなんとかこなし、ミスしてしまったときは芸人のおじさんたちによちよち甘やかしてもらっており、たいへん可愛らしかった。どっかで見たことあるなと思ったけど。これもどっかで見たよなって、思ったけども。
 
 このほかにも、週刊TV誌でのJr.へのインタビュー連載企画がこの週ちょうど彼の回だったり、Jr.3グループ持ち回りでパーソナリティーを務める『らじらーサタデー』も彼と松倉くんの担当週だったりして(この回で放送されたとあるコーナーについては別記事を立てたのでそちらを参照のこと)、如恵留さまへのバフはかなり積まれていた。全国で視聴できるNHKの番組へのレギュラー出演も決まったばかりだった。私はそれらにだいたい間に合った。間に合ってしまったのだ。
 タイミングがよかった。この春でなければ「再発見」からどっぷり首まで浸かることはなかっただろう。あの秋に出会った彼のように。
 すべてはタイミングだ。絶好のタイミングですべてが始まり、通り過ぎていく。
 脇道なく真っ直ぐに引かれたレールの上をトロッコはどんどん加速していった。そうして最頂点に到達したトロッコは、重力にしたがって猛スピードで下降する。
 
 

しんどさの理由。

 2017年からの一年半、推しを推すために全速力でやり抜いて気づいたことがあった。「私はそもそもこの世界が嫌いで、世界が嫌いである人間に推しが増えるということは、嫌いな世界に大好きなかわいい推しを住まわせるということで、増えれば増えるだけ“しんどさ”が倍増する」ということなのだ、と。
 
 トラジャの配信動画のコメントに頻出の単語がある。「やさしい」「気遣い」「平和」わたしはこれらのコメントにおおむね同意する。彼らはやさしくて、ひとを気遣う心にあふれ、尊重と寛容によってもたらされる平和を大切にしている。
 そしてなによりも「正しい」。より正確に表わすなら「正しくあろうとする」。
 
 トラジャのYouTube動画でとくに好きなもののひとつに「二人三脚で全力カルタ回」がある。
 河川敷の野球グラウンドにちりばめられたカルタの絵札を二人三脚で回収し、全力でギャグを披露するというトンチキ企画である。設定のシュールさとゆるいギャグの波状攻撃、読み手の如恵留さまが読み上げたあとホームベースにぽつんと佇む絵面がよくわからないツボにハマって何度も見返した回だ。
 この動画の中でとくに心に響いたくだりがある。
 


Travis Japan【全力ギャグ】球場で二人三脚カルタは爆笑!?  
 カルタの絵札を獲得した元太くんが、持ちネタ(?)である「ノエルの物真似(如恵留さまの特徴的な鼻のかたちを指でつまんで表わす)」を披露するが、審査員である如恵留さまはそのギャグを無得点とした。それに不満げな元太くんに対して宮近さんが放った一言が以下。
 

「あのね、ノエルくんは人を卑下する笑いは嫌いなんだよ」

 すごいこと言ってるな、と思った。つまり「他人を貶めたり、過度に容姿をいじるような方法で笑いをとることを好まない」そう言っているのだ。しかも如恵留さま当人の自発的な言葉ではなく、他のメンバーから客観的にそう思われている、というかたちでもって伝えられたのである。近年、様々なメディアで取沙汰されている「政治的正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」にも通じている、みだりに暴力的であったり、倫理に悖る行為、差別的な価値観を広告や作品に用いないという意識だ。もっと軽微なレベルだが、そういった「正しさ」への目配せが、トラジャの動画にはしばしば現れる。企画の罰ゲームで負けたチームが食事をおごるという流れの中で、その場は代表して1人が支払ったというときに「(負けたチームの)4人で割れよ、ちゃんと」とくぎを刺したり、ロケ先の人垣で企画に夢中になっても「ちょっと声大きくない?」と一般客への配慮を見せたり、等々。そして、そういった「正しさ」への目配せの中心にいるのは、概ねして如恵留さまだった。(雑誌媒体であるが「女性になったら就きたい職業は?」という設問に「女性でなければ就けないという仕事は少ないけど」とやんわり疑問を挟んだり、ラジオではポリアモリーや同性愛を肯定する旨の発言をしている)
 また、これらの発言に対するファンダムの反応も特徴的だ。動画のコメント欄は高評価のコメントほど上部に表示されるような仕組みになっているが、「全力カルタ」動画ではさきに触れた宮近さんの一言に対する言及がトップ掲載になっている。つまりファンダムも「笑いの質」を気にかけているし、この発言に象徴されるトラジャというグループの気風を、「やさしさ」と「正しさ」を、「可愛い」よりも「面白い」よりも、ずっと高く評価しているということがわかるのだ。
(ひとつ、元太くんのために付け加えておくと、彼による「ノエルの物真似」は過去何度も披露されており、その都度ツッコまれつつも笑って受け入れられてきたネタだ。また、如恵留さまが元太くんを面白おかしく物真似してみせたこともある。最年少と最年長である彼らの、年齢や経歴の差からの壁を感じさせないための親密さの表現であり、親愛からくるコミュニケーションのひとつだとわかる。が、「ギャグとして点数をつけ、評価するという段になれば話は別」というのが彼らの絶妙なさじ加減だと思う。)
 
 如恵留さまの「正しさ」が動画よりもっと強く出ているのはジャニーズWEBで連載されている個人ブログだ。保育士の労働環境の問題について言及するアイドルのブログというものがこの世に存在するのか。しました。
 物量がヤバいと噂には聞いていた彼のブログは、その情報量も語られる内容も申し分なく、「長文ブログには気を付けろ」と一年前に学んでいた僕の脳みそをグチャグチャに揺さぶってくるシロモノだった。伝えたい物事が明確にあり、かつそれを伝える力を持つ者が、そのことの責任を自覚しつつ物事を伝えようとしているであろう丁寧で精緻な言葉操り。論文のようなその「正しさ」。
 言っていることがものすごくわかった。ものすごくわかると同時に、ものすごく、わけがわからなかった。熱量があるのに儚い、遠い宇宙の果てで燃えている巨大な星のような、途方もないものを凄まじい勢いでぶつけられている、そんな感触だ。
 とくに今年3月の更新は2017年2月26日にもう一度襲われたようなものだった。あんな想いは二度としたくねえと思ってたのに速攻で二例目が降って湧いたのだ。(逆説的に「2月26日を越えた人間だからかろうじて首の皮一枚で繋がった」という面もなくはない。)3月14日という日付がトラウマになりそうだ、とか、そんなジョークでも挿し挟まないとやってられないほどの衝撃だった。すっげぇ時間かけて読み終えたあとしばらく寝込んだ。
 未だに言語化できかねているのだけれど、2つの推しに共通しているのは、圧倒的に打ちのめされていて、打ちのめされているはずなのに、彼らの発する言葉は仲間たちや、家族や、ファンダムや世界への圧倒的な慈しみと愛で満ちあふれていて、そしてそれを臆面もなく無防備に、1000%の力でさらしてしまうところだと思う。私にはそれが抱えきれなくて、わけもわからずただただ圧倒されてしまうのだ。
 ともかくも、私はまた1/7の確率で、一番引いてはいけないカードを引いたらしかった。
 
 「しんどくなれけば“推し”じゃない」なんてことは認めたくないかったのに、結果はそれを物語る。
 
 最も「しんどい」のはNHKでレギュラー出演枠を獲得したあの番組を見ているときだ。
 以前の記事にも書いたけど、私、五輪やめとけ派なんですよ。誘致したこと自体が失策だと思っているし、なんなら世界中が東京の都市機能をつぶすために指名したんじゃあないかとすら思ってる。ていうか国を挙げたプロジェクトのように言ってるけど「東京都」が誘致したんであって地方関係ないしな! 関係ないのに物流規制そのほか諸々でワリ食うってんだからはた迷惑にもほどがある。そもそも異常な暑さで現地民でさえ100人以上死にまくってる時期に、ろくな対策もとらせずに他国民を呼ぶな。殺す気か。
 だから推したちにはこのプロジェクトに極力関わってほしくなかった。もう一人の推しはこのタイミングで日本脱出してくれたおかげで(おそらく)関わり合いにならなそうで安心した。いやー推しに仕事がないって最高だな!
 如恵留さまのこの仕事のことを知ったときは苦虫を噛み潰したような気持ちになった。今この時に仕事を得るということは、どうしようもなく「流れ」に巻き込まれてしまうということなのか、と。しかし一方で、パラ競技というものに焦点を当てているところにだけは、少し興味を引かれるものがあった。
 かなりギリギリまで見るのを躊躇った。だが、やはり、でも、「百聞は一見に如かず」だろうと、宮近さんが彼のために作ったキャッチコピーが頭をよぎった。うーうーおめきながら月曜8時のEテレに録画設定をした。
 結論から言って、番組はすこぶる良かった。そして出演者としてのアイドルチーム・如恵留さまが、もうハチャメチャに良かった。変にネチョネチョしていない、倫理にのっとった、周縁にやられがちな物事にスポットをあてた番組の中で、物腰やわらかで、品があって、聡明で、真摯に物事を見つめ、まっとうに学ぶことを楽しみ、愉快な進行役の後輩として、お茶目に可愛らしく振る舞う姿。「こんな推しが見たかった」が全部ぜんぶ叶っていた。
 だが、それでも、これらはすべて2020年に繋がっている。繋がってしまっている。番組のはしばしで「来年」「2020年」を匂わされる瞬間、我に返って情緒がグッチャグチャになるんですよ。「パラマニア発作」って呼んでるんですけど。あの番組見てマジで落ち込んでるの世界中で私だけだろうなたぶん。
 7月14日更新の彼のブログを読んでさらにしんどくなった。「正しい」。あまりにも「正しい」。「正しい」がゆえに、その帰結が2020なのが辛い。しんどい。やりきれない。
 彼が「正し」ければ「正しい」ほどに、私の心は真っ二つに引き裂かれた。
 
 

2019年6月23日。

 私は情報局に加入した。翌日から出演舞台『EndlessSHOCK』の申し込みが始まるというタイミングである。あの日から一年。予期した通り時間は飛ぶように過ぎ去って、とくに最後のひと月が怒涛のようだった。
 
 2017年の年明けと同じように、今回もまたひとつの誓いを立てた。
 今度こそ推しの狂気に呑まれない。推しが論文を提示してくるならこちらも理論武装で対抗する。推しに負けない。あなたは「正しい」、けれども私だって「正しい」と。
 この世にはたして推しに戦いを挑むオタクがいるだろうか。
 ステージ上で推しとタイマンラップバトルをするオタクもいるらしいが、それとはわけが違う。オーディエンスはいない。相手からの認知もまず成されないし別に望んじゃあいない。ただ私は私の問題意識でもって推しと向き合わなければならなかった。向き合っているつもりで壁に向かって無意味なシャドーボクシングをしているだけだとしても、私には必要なプロセスだったのだ。
 
 夏になった。入会のタイミングが遅れ、彼らの夏の単独公演への応募は間に合わなかったため、人様を頼って潜り込まなければならない。果てのないサマパラチケット探しの旅が始まろうとしていた。
 

そして今、8月8日の夜から14日を越えて、この追補を書いている。

 もう夏は終わろうとしている。例によって筆が進まず、まとまらず、進まないうちに次から次へと情報が入ってくるため改稿に改稿を迫られてこの体たらくである。あ、ちなみにサマパラには入れませんでした。
 前回の、8月7日にあげた記事はむろん8日に大きな変動を迎えることを予期してなんとか間に合わせたものだ。予言は当たった。最悪のかたちで。
 
 思い出されるのは、如恵留さまと「再会」し、「間に合ってしまった」TV誌の連載『Jr.維新』(『ザ・テレビジョン』2019/6/7号)で語られていた言葉だ。
 

 『デビューしたい!』という目標をジャニーズJr.は持つべきなのに、それも他の人と比べて薄いかもしれない。
  
 僕はジャニーズになりたいんじゃなく、魅力的な人になりたいんです。

 
 私はこれを読んで安堵していた。肩書きにこだわりがないということ、それは「ジャニーズ」「アイドル」という制度に辟易していた私にとって紛れもなく福音で。もしかしたら、彼ならば心穏やかに推していけるのかもしれない、と思った。と、同時に、「あまりに私にとって都合がよすぎること」を畏ろしく思った。そんなことはけしてあり得ないし、そんな「都合のいい」手合いは絶対に私の推しになんてならない。頭のどこかでわかっていた。
 案の定、そんな「都合のいいこと」は起こらなかったわけだ。
 
 8日夜。『Jr.祭り2019』フル尺配信ですべてを見た。あらゆる方向で語り継がれる「伝説」の公演になったことだろう。
 公演の冒頭からデビュー決定組とそうでないものの選別はなされていて、トラジャは「そのほか大勢」の引率者のような役割を振られているように見えた。露骨なまでに見え透いていた。
 だから発表の瞬間もそこまで驚愕はなかった。なるほどなるほど、おめでとう。これで蓋が外れた、という気持ちが大きかった。キャッチコピーの通りに、ここから始めていくのだろう、まだまだ先は長いのだ、と。
 
「ここ」が人の感情を内臓をまな板に乗せて切り刻んでお皿に盛って提供する場だということは前々からわかっていたし、多くのオーディエンスは「それ」を食べたくて食べに来ているということもわかっている。わかっているつもりだった。
 ただ、
 よりにもよって推しが、
 「好都合」だったはずの推しが、
 あの日あのときあの場面で、
 

 泣いて る?
 午後7:16 · 2019年8月8日
 
 いや今 一瞬みのがした
 午後7:17 · 2019年8月8日
 
 いや・・・・・・みちゃった・・・
 午後7:18 · 2019年8月8日
 
 見逃してないです・・・
 午後7:18 · 2019年8月8日
 
 
 見ちゃった・・・
 午後8:28 · 2019年8月8日
 
 見ちゃったんだなぁ・・・
 午後8:28 · 2019年8月8日  

 
 明け方5時まで眠れなかった。
 あの発表が、本当にデビュー決定組のみに周知され、それ以外にはあの場で初めて知らされたことだったとか、老翁の写真がどーだとか、後日、当人の口から、ないしはテキストによって語られた心情だとか、それら全部が真実であろうがなかろうが、そんなことはこの際なんにも関係ない。どうだっていい。重要なのはあの瞬間を わざわざ ご丁寧に カメラで抜いたこと。それが視聴者に、その場のすべてにどんな影響を及ぼすのかわかっていて、そのようにされたのだということ。それだけが絶対的な揺るぎない事実としてある。
 私はあれを見て、「ああまたうまいこと人の感情をまな板の上に乗せやがりましたね」と思ったし、動揺したら思う壺だと思ったし、まんまと動揺させられてしまったし、思う壺だった。
 ツイッターランドのタイムラインはほぼ一色に染められていた。スクショされて切り取られて複製され拡散されていくあの場面と、嘆く声、怒る声、同情の声、叱咤する声。みんなたちの素直な声だった。感情を嬲りものにし、それを見せつけることによって生まれた新たな感情を嬲る、グロテスクな光景だった。
 一個の見せしめによって、大衆とはかようにして扇動されるのだろう。実際、これをきっかけにしてファンダムは奮起しはじめた。10日から始まった単独公演でのメンバーから直接の煽りもあって、オーラスの22日までにひとつの目標を達成させてしまった。彼らはタフだった。そしてプロの「商品」だった。なにかを利用し、なにかに利用されていくことを了承していた。売れていくために、生き残るために、なんだってする。それは「正しい」。彼らを取り巻く市場のルールではまったく「正しい」ことだ。どんなにグロくて、エグくて、不条理でも。
 私の推しは「正し」くあり続け、8月の14日にまた「正しさ」で私を引き裂いた。
 
 結論として、推しはぜんぜん都合よくなんかなくて、でも「都合のよくない」ことによって私は改めて、安堵している。私はどこまでいっても私であり、私の推しはどこまでも私の推しだと再確認できた。1/7の確率で引いたカードは「正しく」ここへと私を導いた。
 一年前から何も変わっていないのだ。
 私はそもそもこの世界が嫌いで、世界が嫌いである人間に推しが増えるということは、嫌いな世界に大好きなかわいい推しを住まわせるということで、増えれば増えるだけ「しんどさ」が倍増する。
 だが、それでも、推しのことを考えずにはいられない。推しを目で追わずにはいられない。どれだけ心が引き裂かれようと、脳みそを握りつぶされようと、胃袋がねじ切れようと、血走った眼を無理やりにでもかっ開いて、その姿を見つめ続けなければならないと思う。思わせる。それが私にとっての「推し」なのだということ。
 あれを見てしまったから、もう8月8日より前の自分には戻れない。
 
 ファンダムのオタクたちは口々に言う。「あの日があったから強くなれた。」私は「本当にそれでいいのか?」と問いたくなる。それを認めたらもっとずっと恐ろしいことが起こってしまうから。「私たちは傷や痛みに金を払ったんじゃあない」と訴え続けなければ、それを否定し続けなければ、同じことが繰り返されて、同じ傷や痛みが増やされるだけだから。そんなものがなくたって強いと、美しいはずだと、言わなければならなかった。
 そうわかっていても、あの日のあの発表のあと、再度登場した彼らが披露した『夢のHollywood』はあまりにも美しくて、美しくて、美しかった。
 美しいと思う自分を心の底から嫌悪した。「あっ 死にたいな」と思った。
 泣きもわめきもせず、ただ、静かに、死にたくなった。
 
 

Introduction.

 その場のルールを受け入れていないから、その場のルールにのっとって与えられる栄光は信じない。
 嫌な国の嫌なメディアで嫌な活躍をしてほしくないから、デビューしてほしいなんて1ミリも思わない。
「アイドル」として事務所に居続けてほしいとも思っていない。
 彼らが望むのであれば、どこか遠くに行って、一生姿を見せてくれなくたって構わない。
 それでも、それでもデビューしたいんだとか、売れたいとか、ここに居たいから頑張るんだというのなら、魅入られてしまった私は引き裂かれ続けながら、地獄まで付き合うしかないのだろう。
 
 健康で、日々幸せを感じて、生きていてくれさえすればいい。そしてあなたとあなたの育んできた世界が、変わらず、慈しみと愛のあるところであってほしい。
「アイドル」を推すことにとことん向いていない自分が、最後に残す願いは変わらない。この先も、ずっと。